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空間コンピューティングで思うこと

昨今VR機器のMR機器化がトレンドになっており、特にApple Vision Proが出てきてから空間コンピューティングという言葉をよく耳にするようになりました。


確かによくできています。特にキーボード/マウスという古来から用いられてきた入力機器を取っ払って、スマートフォンを扱うように大画面の空間コンピューティングを行えるところは、さすがAppleと言わざるを得ないところです。

しかしながら、搭載されているデバイス群を見てみると、

[出展] How to Use Apple Vision Pro for Your Business: Use Cases with Examples

トラッキング用のIRカメラとIR照射器、環境認識用の深度センサーとVideo See Through用のStereo RGBカメラといった感じですね。スペックシートを見るともう少し追加のセンサーがあるようですが、いわゆるMR用の装備を手厚く整えた、と言ったところでしょうか。

一方…

今からさかのぼること約10年前、VR元年と言われた頃に現れたMicrosoftのHololens。これが最初に出てきたときは、どうやっているのだろうと衝撃を覚えましたが、紹介動画はこのような感じでした。


これだけでも技術のオーラがすごいですが、こちらの動画を見るとよりできることやコンセプトがよくわかります。


空間にウィンドウを表示することももちろんできるわけですが、それよりも現実のオブジェクトにExtra CGを追加することによって、効率的な業務訓練や教育への適用をうたっていますね。わかりやすい適用事例ではあるけれども、具体的な用途については模索する姿勢もうかがえます。
加えて後半部のLimitationで語られているように、FOVが34度と狭く、目の前の限られたエリアにのみARオブジェクトを表示できるものではありましたが、世界初のこの体験はそれをも上回る感動があったように思います。

そして…

それから2年半たった2019年後半に、満を持してHololens 2が発売されます。Optical WaveguideはHololensと同等のものでしたが、MEMSディスプレイを装備し、より明るい画像をより広いエリア(FOVは52度)に表示できるようになりました。またEye Trackingも装備されました。紹介動画を見てみましょう。


一方センサー類はHololensと同等ということで、より使い勝手がよくなったHololensという側面が強かったですが、それだけにHololensのときはぼんやりしていたコンセプトがより具体的に鮮明になった感が強いです。Hololens 2の発売に先立ってMicrosoft World Congressで発表されたデモを見てみましょう。


Eye Trackingは新たな入力手段としての可能性を探るものだったのでしょうか。そこがいまひとつはっきりしないところではあるのですが、それを除くと本当に素晴らしいデモですね。リアルタイムで三人称目線のカメラに対してARオブジェクトを配置し操作も正確にできているあたり、環境認識の共有を中心にかなり作りこまれている印象です。まさに空間コンピューティングという感じです。

そしてこの発表の中で、”Welcome to my Mixed Reality home” という言葉が出てきますが、まさにこれがARを超えたMRのさきがけなのだという宣言がなされた瞬間でした。

さて…

Apple Vision Proに戻ると、空間コンピューティングやMRの二番煎じという印象を持つ人も少なくないのではと思います。しかしHololens 2と明らかに違うのが、2基のRGBカメラを装備したVideo See-throughであるということでしょう。Optical See-throughではARオブジェクトが半透明になってしまったり、影をつけることが難しいため浮いた感じになってしまうことがデメリットとしてあげられますが、そこを見事に解決してウィンドウに影をつけてAppleらしい緻密な表現になってますね。

そして常に取得され続けるステレオ環境映像はそのまま空間写真や空間ビデオとして共有することができ、くっきりした画質のまま観察することができる、まさにVideo See-throughの強みを前面に押し出したコンセプトになっています。

iPhoneやiPadで培われたプラットフォームの強みを生かして、visionOSは今後どう進化していくのか、興味と期待を持って今後も注目していきたいですね。


   
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