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IEEE VR 2022レポート~Workshop編

3/12からIEEE VR 2022が始まりました。今年はNew ZealandのChristchurch開催です。日本との時差としては4時間と比較的少ない方でしたが、最初のセッションが日本時間の朝4時から始まるので、かなりの早起きを強いられます。ただランチタイムが日本の朝食の時間にちょうど合っているので、朝さえクリアできればそのあとは過ごしやすかったですね。

全スケジュールはこちらがわかりやすいです。3/12(土)と3/13(日)の二日間は数々のWorkshopを中心にTutorialやDoctoral Consortiumが開催されました。ここではその中からいくつかの中心的な話題をピックアップしてご紹介します。

Zoom Events

3/14-16に行われるPosterセッションはiLRN Virtual Campusという3D空間のVRプラットフォームで大々的に行われますが、それ以外のセッションはリモート会議でおなじみのZoomがベースで行われます。

(実際にはiLRN Virtual CampusのVR学会空間内のホールでも聴講できるのですが、そうすると後述のように複数のセッションを行き来するために結局ホール間の移動を強いられるので、恐らくわざわざ重い3Dアプリケーションを立ち上げて聴講している人は少なかったのではないでしょうか)

スケジュール表を見てもわかる通り、同時並行にいくつものセッションが行われます。パンデミック前は物理的な部屋の移動が大変で、裏のセッションを見逃しがちでした。コロナ禍に入ってからは基本的にリモート参加になり、最初のアトランタ開催のときは実験的な側面も多々ありましたが、前回のリスボンでかなり洗練され、そして今回のクライストチャーチを迎えました。

リモート開催でのセッションはZoom Eventsで行われ、同時並行のセッションへの行き来が効率的に行えます。というのは、Lobbyが用意され、そこからは開催中のすべてのセッションを同時に見ることができるからです。Lobby画面は上のような感じで、右のペインに開催中のセッションが音声なしの動画リストで表示され、クリック選択すると中央の大きな画面で音声付きで見れるようになります。

Joinボタンを押すとそのセッションに参加することができるようになりますが、質疑応答は別のチャネル (DiscordというSlack的なアプリケーション) を介して行われますので、質疑応答レベルであればLobby参加でも十分で、一部のWorkshopで行われたブレイクアウトルームやジャムボードを利用したブレインストーミングに参加したいような場合のみ、Joinボタンを押してセッションに参加すればよい状況でした。

一瞬で裏のセッションに飛ぶことができ、つまらなさそうだったらすぐに元に戻れ、とても効率的にセッションを回れるのはパンデミックがもたらした有益な資産と言えます。リモート開催で参加費用も以前と比べてとてもお安くなり、学会の裾野を広げる効果もあったのではないでしょうか。

もちろんデモは体験してナンボの世界ですし、開催地の文化を知る機会や豪華なディナーとともに行われる格調高い授与式など、物理的な参加のよさももちろん格別ですけどね。

Workshops

Workshopのリストはこちらにあります。土日の二日間で以下のWorkshopが開催されました。

Saturday, March 12, NZDT, UTC+13

  • 3D Reconstruction, Digital Twinning, and Simulation for Virtual Experiences (ReDigiTS) 8:00 – 11:30
  • Sonic Interaction in Virtual Environments 8:00 – 11:00
  • ARES – Augmented Reality Enabling Superhuman Sports + Serious Games 8:00 – 11:00
  • 1st International Workshop on Socially Intelligent Virtual Agents (SIVA) 8:00 – 11:00
  • Open Access Tools and Libraries for Virtual Reality 11:00 – 14:00
  • 1st International Workshop on eXtended Reality for Industrial and Occupational Supports (XRIOS) 11:00 – 15:00
  • Empathic Computing 11:00 – 16:00
  • Data4XR: Datasets for Developing Intelligent XR Applications 14:00 – 17:00

Sunday, March 13, NZDT, UTC+13

  • 5th IEEE VR Internal Workshop on Animation in Virtual and Augmented Environments (ANIVAE-2022) 8:00 – 11:00
  • 3rd Annual Workshop on 3D Content Creation for Simulated Training in eXtended Reality (TrainingXR) 8:00 – 11:00
  • Workshop on Virtual Humans and Crowds in Immersive Environments (VHCIE) 8:00 – 11:00
  • Metaverse as a promise of a bright future? social interactions in a world of isolation 8:00 – 11:00
  • XR for Healthcare and Wellbeing 8:00 – 11:00
  • 8th Workshop on Everyday Virtual Reality 11:00 – 14:00
  • 8th Workshop on Perceptual and Cognitive Issues in XR (PERCxR) 11:00 – 14:00
  • Health and Safety in VR and AR 11:00 – 14:00
  • Workshop on Novel Input Devices and Interaction Techniques (NIDIT) 11:00 – 14:00
  • X-IRL risks: Identifying privacy and security risks in inter-reality attacks and interactions 14:00 – 15:00
  • METABUILD: First Workshop for Building the Foundations of the Metaverse 14:00 – 17:00
  • 7th Annual Workshop on K-12+ Embodied Learning through Virtual and Augmented Reality (KELVAR)

この中からメジャーな話題をピックアップして行きたいと思います。

ARES – Augmented Reality Enabling Superhuman Sports + Serious Games

  • SLAMを利用したセグメンテーション –> 実環境にAR要素を重畳
  • Serious GameへのARの適用 –> 漢字カードにその意味の絵を重畳、障害者のセラピー
  • ゴルフ練習の際にBody poseの重畳、など

Personalization of Intelligent Virtual Agents for Motion Training in Social Settings

  • リモート会議の顔表示で正面顔ではなく話し合っている者同士が(少し)向き合うように配置し視線が交わるようなAgent表示
  • トレーニングにおけるトレーナー Agentとのグループインタラクション配置
  • Metaverseの定義 –> バーチャルファッションショーやバーチャルコンサート、など

Empathic Computing

  • EEG, PPG, EDAなどを利用したユーザーのストレス度の推定と、ハプティックガイダンスによる軽減の観測
  • 脳活動や生体活動の適用による「共存」への効果、など
  • ブレインストーミング:multiple user support, understanding empathy, representing empathy cue, collaborationなどの側面から

Open Access Tools and Libraries for Virtual Reality

  • MicrosoftのHeadBox, RocketBox
  • Ubiq
  • RagRug、など

Data4XR: Datasets for Developing Intelligent XR Applications

  • Physiological dataset for VR
  • Egocentric object segmentation
  • Hitchhiker’s guild to the Metaverse、など

Metaverse as a promise of a bright future? social interactions in a world of isolation

  • Metaverseとは
  • 教育の場としてのMetaverse
  • 新しいマーケットチャネル
  • Sensor enhanced HMD –> Eye contact interaction
  • Zackerburgの思惑 ?
  • VR Chat –> ゲーム体験とそこからの学び、など

Workshop on Virtual Humans and Crowds in Immersive Environments (VHCIE)

  • 3D ReconstructionによるAvatarでのコンサート
  • Intelligent Virtual Assistant
  • Virtual agentとのEye contact interaction
  • Pain reliefやRehabilitation
  • Body emotionやBody languageの学習
  • 2D画像からの3D Reconstruction
  • 雑踏の認識や生成、など

Workshop on Novel Input Devices and Interaction Techniques (NIDIT)

  • For social interaction
  • Precise Interface, Ergonomic Interface, Reliable Interface
  • Network latency duaring AR remote musical collaboration
  • XR researchers, Designers, Artists, Tangible UI, 3D UI, Domain experts -> Creative Spatial Interface
  • Ubiq.online、など

Health and Safety in VR and AR

  • VRではさまざまな知見が積み上げられ、例えば年齢制限などはっきりしているが、ARでは使用上の制限プロトコルが確立されていない
  • Oculusの取り組み
  • ブレインストーミング -> mitigation technique, casual factors, design, situational awareness, accessibility, など

7th Annual Workshop on K-12+ Embodied Learning through Virtual and Augmented Reality (KELVAR)

  • 教育向けAR visualization -> 電気や磁気の可視化、音の可視化
  • 医療向けAR visualization -> 多数のシナリオ
  • 教師と生徒の間の学びをAgentが活性化、など

METABUILD: First Workshop for Building the Foundations of the Metaverse

  • Meta campusの取り組みからの知見
  • SLAMによるシーン理解と3D Reconstruction
  • XRとIoTによるMetaverse環境の結合 -> Social VR platformの比較
  • Extend Metaverse Agents Framework、など

思うところ、

Workshopというのは、大きく二つの側面があるのではないかと思われます。一つはそのトピックに関わる過去の実績を広く浅く知る機会、もう一つはConference paperに落ちてしまった論文の受け皿としての役割。

特に前者はとても有益で、時にかなり古い実績の紹介も行われますが、認められた実績の総集編ゆえかなり濃い内容に触れることができます。

今回の傾向として、

はやりの “Metaverse” という言葉が入ったセッションがいくつかありますが、この扉から入ると全体の構成がしっくりきます。Metaverse -> Social VR -> Agent, Crowd -> Virtual Human -> Embodiment という流れや、Social interaction -> Empathy computing -> Perception, Cognition という流れですね。

もちろんこれに留まらない汎用的なトピックとして、Immersion, Cybersickness, Input, Hapticなどの各要素技術はベースラインとして存在しますが、Metaverseを中心にトピックの構成を考えて行くと、さまざまな技術の役割を理解しやすくなり、小難しい発表もすんなりと入ってくると思います。

絵にするとこんな感じでしょうか。

並びがしっくりこないと感じるかも知れませんが、キーワードとしてはこんな感じかなと思います。

一方で、

個人的に印象に残った講演を二つあげるとすると、Workshop: Health and Safety in VR and AR のRichard Yaoと、Tutorial: Emotion and Touch in Virtual Reality のDarlene Barkerです。

RichardはMeta (Facebook) からの登壇ということで、注目度は高かったと思います。内容的には非常に一般的で安全なものに留まっていましたが、企業としての社会への影響度を考えると仕方がないところでしょうか。Cybersicknessが専門の一つだそうで、このセッションのブレインストーミングでも中心的な役割を果たしていました。

一方Darleneはセッションは、開催時刻が変更になったようで、偶然聞くことができました。広くはEmpathy Computingも含んでいると思いますが、Emotion and Touchというタイトルで講演は静かに淡々と進んでいきます。誰かと感情的に繋がるのに有効なのはTouchであるということを切々と述べられて行くのが印象的でした。女性ならではの視点というか、女性の発表だったからこそ清潔感を以て聞くことができた思います。

それから、

今回は功労賞的なAwardの発表も大々的にあったのですが、日本からはNAISTの清川先生の数々のご尽力が称えられていました。また、VR/ARの歴史で名前が上がる方々(Myron Kruger, Tom Farness, Hirokazu Kato, etc…) が受賞していたのは印象的でした。そして個人的にはあのIvan Sutherlandさんがリモート参加されていて、ライブ映像ではありましたが生で会えたことに感銘を受けました。

ということで、

3/12から始まったIEEE VR 2022のWorkshopを中心に、最初の二日間の模様をダイジェストでお届けしました。いかがだったでしょうか ? 少しは雰囲気伝わったでしょうか ?

パンデミック前の最後の開催が大阪だったのですが、VR元年以降年々参加者も増えて盛り上がって来ていたところでのこのコロナ禍ということで、体験してナンボのVRとしてはなかなか厳しい面もありましたが、3回目のリモート開催でフレームワークというかインフラ的には落ち着いてきた感はあります。

ただ、次回書く予定ですが、現地開催だったときには大盛り上がりだったポスターセッションは、リモート開催では依然として見た目閑散としていて成功感は足りないですね。これはリモート開催になってからの残念な面の一つかと思います。


   
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