韓国のスタートアップにLetinARという会社があります。PinTILTという技術をARグラスに適用し、CES2024でもブースを構え、盛り上がっていました。まずその映像を見てみましょう。
実際に装着してみないとどんなものかわかりにくいですが、現実の世界にCGなどで作った映像を重畳できる技術ですね。
VR元年と言われた頃はHololensがOptical Waveguideを使って実現していましたが、ARヘッドセット的な大規模なシステムでした。同様の技術を携えてMagic Leap Oneがほどなくして出てきましたが、比較的ARグラスに近い形状にはなってきていました。その後Nreal LightなどBirdbath方式のARグラスが出現し、現在市場に出ているARグラスはその多くがBirdbath方式のものになっています。
それとは一線を画す方式として、LetinARの技術は以前から注目されていました。
創世記
最初に出てきたのは、このようなピンホールが数多く見えるものでした。

簡単に構成を説明すると、一番上に見えている直方体の部分がマイクロディスプレイです。LCOSのようです。そこから下方向へ映像が射出され、ちょうどレンズ中央部あたりの湾曲したラインがミラーになっていてそこで反射します。反射した映像がピンホール形のミラーで反射して目に入り、現実世界の上にディスプレイの画像が重畳される、という技術です。
この技術の画期的なところは、100度以上のFOV(視野角)にAR画像を重畳できる点です。ピンホール越しにAR画像を見ることになるため、暗くなるという欠点はあると思われますが、他の技術とは一線を画するものでした。
創世記のこの技術やピンホール効果については、こちらの動画(LetinAR~面白い光学系を作る韓国企業、その原理とは?)が参考になると思います。
CES2024
最初の動画を見てわかるとおり、CES2024ではピンホールではなくライン状になってますね。これによってより明るいAR画像表示が可能になったと考えられます。

また、ミラーバーがハーフミラーバーに置き換わったものもあるようですが、この違いが見た目にどのような違いを生じるのか、大変興味深いです。
PinTILTという技術
ではこの技術はどのようにしてディスプレイ映像を目に照射しているのでしょうか ? とてもわかりやすい動画がありますので、見てみましょう。
わかりましたか ? 面白いですよね。湾曲したラインだけでなく、グラスの前面でも2回反射するのですね。6本見える直線状のミラーのラインに接触しないように光路を構成するため、ある程度グラスに厚みは必要ですが、Birdbathのような比較的シンプルな光路構成をこの薄さのグラスに詰め込んでいるのは、とても素晴らしい技術と言えます。
以前紹介した
KURA GalliumというARグラスがありました。(広視野角ARグラス、Kuraの状況)今では風のうわさも聞かなくなってしまったので、量産が難しい技術なのかも知れませんが、こんな構造でした:

ピンホールミラーがとても細かく、詳細はわかりませんが成型精度が求められる技術に見えますので、これに比べるとLetinARは製造しやすい技術には見えます。しかしBirdbathの比較的シンプルな部品構成と比べると、LetinARでも手の込んだ工程が必要とは言えそうです。
パートナー
共同開発パートナーも複数社出てきているようなので、じき世の中に商品としてお目見えするかも知れませんね。ここ最近あまり派手なハードウェア寄りの新技術が出てきていないVR/AR界隈なので、こういったものが出てくると普段使いの可能性がまた一段高まってきますよね。楽しみです。