光学系から見るARグラスの進化
XREAL OneとOne Proを比較すると、多くの記事はまず視野角(FOV)の違いに注目します。
| 項目 | XREAL One | XREAL One Pro |
|---|---|---|
| 光学系 | Birdbath | X Prism(Flat Prism) |
| FOV | 50° | 57° |
| ディスプレイ | Sony製 Micro OLED | Sony製 Micro OLED |
| パネルサイズ | 0.68インチ | 0.55インチ |
| リフレッシュレート | 最大120Hz | 最大120Hz |
一見すると、One Proは単純な上位モデルに見えます。
しかし、この表をよく見ると興味深い事実があります。
One ProはOneより小さなディスプレイを採用しているにもかかわらず、より広い視野角を実現しているのです。
XR研究者の視点から見ると、ここにこそOne Proの本当の価値があります。
ARグラス最大の課題は光学系
ARグラスの設計では常に4つの要素が求められます。
- 軽量であること
- 薄型であること
- 明るいこと
- 広い視野角を持つこと
しかしこれらを同時に実現するのは簡単ではありません。
特に視野角を広げようとすると、
- ディスプレイを大型化する
- 光学系を大型化する
必要があり、結果として重量やサイズが増えてしまいます。
ARグラスの歴史は、ある意味では光学系との戦いの歴史でした。
XREAL OneはBirdbath光学系の完成形
XREAL OneはBirdbathと呼ばれる光学方式を採用しています。
Birdbath方式は現在のARグラスで最も普及している方式のひとつです。
特徴は、
- 高画質
- 高輝度
- 比較的低コスト
という点にあります。
一方で、
- 光学系が厚くなりやすい
- 前方へ張り出す
- 視野角拡大に限界がある
という課題も抱えています。
それでもXREALは長年Birdbath方式を磨き続け、Oneでは50°という比較的広い視野角を実現しました。
映画視聴やゲーム用途では非常に完成度の高い製品です。
One Proで変わったのは光学思想
One Proでは「X Prism (Flat Prism)」と呼ばれる新しい光学系が採用されました。
ディスプレイ業界で著名なアナリストである Karl Guttag 氏は、One Proの光学系について詳細な分析を行っています。(XReal One Pro Optics and Its Connections to Ant-Reality and Google)
同氏によれば、One Proは単純なBirdbathではなく、
- Prism
- TIR(Total Internal Reflection:全反射)
- 偏光技術
などを組み合わせた構造になっていると考えられます。
重要なのは、
より効率的に光を扱えるようになったこと
です。
実はOne Proのディスプレイは小さい
ここがOne Proで最も興味深いポイントです。
通常、
より広いFOVを実現したなら、より大きなディスプレイを使ったのだろう
と考えがちです。
しかしOne Proは逆です。
| 製品 | ディスプレイサイズ | FOV |
|---|---|---|
| One | 0.68インチ | 50° |
| One Pro | 0.55インチ | 57° |
ディスプレイサイズは約19%小さくなっています。
それにもかかわらず、
FOVは14%近く拡大しています。
これは単純なスペックアップでは説明できません。
なぜ57°を実現できたのか
ARグラスのFOVは、
単純にディスプレイサイズだけで決まるわけではありません。
概念的には、
ディスプレイサイズ
x
光学系の倍率
↓
視野角
で決まります。
One Proでは光学系を薄型化することで、
ユーザーの眼を光学系へ近づけることが可能になりました。
すると同じサイズの映像でも、
より大きく見えるようになります。
つまり、
光学系を薄くする
↓
眼を近づける
↓
見かけ上の映像が大きくなる
↓
FOVが広がる
という仕組みです。
57°という数字は、
大きなディスプレイを搭載した結果ではなく、
光学設計そのものを改善した結果なのです。
興味深い点
ARグラスのFOVを広げる最も単純な方法は、より大きなマイクロディスプレイを使うことです。
しかしそれは通常、
- 光学系の大型化
- 重量増加
- 消費電力増加
を伴います。
興味深いことに、XREAL One Proは逆のアプローチを採っています。
Oneより小さな0.55インチのマイクロOLEDを採用しながら、57°というより広い視野角を実現しているのです。
ディスプレイは小型化
↓
光学系は薄型化
↓
FOVは拡大
という、一見すると矛盾した進化を実現しています。
これはスマートフォンカメラで言えば、
センサーを大型化するのではなく、
レンズ設計を改善して画質を向上させるアプローチに近いでしょう。
One Proが示しているのは、
ディスプレイ性能の進化ではなく、
光学設計の進化なのです。
Birdbathの完成形か、その次か
そう考えると、OneとOne Proの違いは、
単なる
50° vs 57°
という数字として見える部分だけではないですね。
むしろ、
| XREAL One | XREAL One Pro |
|---|---|
| Birdbathの完成形 | Birdbathの次世代化 |
| 高い完成度 | 技術的挑戦 |
| ポータブルディスプレイ | 次世代ARグラスへの橋渡し |
と捉える方が本質に近いかも知れません。
Oneは非常に完成度が高い製品です。
一方のOne Proは、
ARグラスの光学技術が新しい段階へ進み始めたことを示す製品と言えます。
おわりに
XREAL One Proの価値は、57°という数字そのものではありません。
むしろ、
0.68インチから0.55インチへとディスプレイを小型化しながら、50°から57°へ視野角を拡大したこと
にあります。
そこから見えてくるのは、
ディスプレイ競争ではなく光学設計競争です。
OneはBirdbath光学系の完成形。
One Proはその限界に挑戦した製品。
そう考えると、この2つは単なる兄弟モデルではなく、ARグラスの進化を象徴する存在として見ることができるのではないでしょうか。
