VR

2021年後半から2023年前半に出てきたVR HMDたち

VR業界は日進月歩ですが、Oculus Questの出現からはじまったInside-Out方式の主流化は今やあたり前となり、そして2021年後半からパンケーキレンズ搭載のHMDが出現し、薄型化の流れが始まりつつあります。現時点では価格バランスにばらつきがありますが、今後も薄型化は進んでいくでしょう。そしてディスプレイの高解像化に伴って必要となっているFoveated Rendering導入の流れにも目を向けていきましょう。

ここでは市場導入順に、

  • HTC Vive Flow
  • PICO 4
  • Meta Quest Pro
  • PS VR2
  • HTC Vive XR Elite

を紹介していきます。

HTC Vive Flow

2021年11月18日発売のHTC Vive Flowです。かなり奇抜なフォルムで驚きました。眼鏡のように扱えるコンセプトで、他社に先駆けてパンケーキレンズを搭載した薄型VR HMDの登場でした。

こちらの記事(裸眼で視聴できる小型のVRグラス「VIVE Flow」を体験!眼鏡を掛ける感覚に近い驚きの使い勝手をレポート)にも詳しい体験記事があります。パンケーキレンズの概要もありますね。要は、偏光レンズとハーフミラーによって光路を折り曲げて、実質的な焦点距離は変えずに物理的なレンズとディスプレイの距離を劇的に縮めたということですね。

トラッキング用のカメラは正面の2基のみで、Video See-through用途(モノクロ表示)も兼ねています。また、Eye Trackingの機能はありません(よってFoveated Rendering未サポート)。

それ以外の特徴として、視力対応機能があり眼鏡いらずなこと、コントローラがスマートフォンなこと、つるが折り曲げられてコンパクトにしまえることなど、まさにVRグラスを目指したコンセプトを感じます。VR HMDの薄型化のさきがけと言える機器の登場でした。

PICO 4

2022年10月7日発売のPICO 4です。4基の赤外線カメラが見えますが、これによってトラッキングを行います。また、HMD中央部にRGBカメラが1基搭載されており、Video See-throughで外の世界がカラー表示されます。

パンケーキレンズ搭載で薄型軽量化されています。こちらの記事(PICO 4を徹底レビュー!! 本当に軽いのか? 画質はどう? 気になるポイントをガッツリ検証)を見ると実証実験が行われていたりして、とても参考になります。いずれにしても、明らかに薄型化に成功していますね。3MのReflective Polarizer(反射偏光板フィルム)を使用しているようです。

また、IPD調整はもちろんできるのですが、なんと自動で動きます。この価格でこれは驚きましたね。一方Eye Trackingには対応していないため、GPU負荷軽減策はFixed Foveated Renderingに留まります。

ちなみに2023年1月発売のビジネス向けPICO 4 EnterpriseではEye Tracking対応となっています。 

iFixitではありませんが、分解動画があがってました。興味ありましたらご参照下さい。(We disassembled the Pico 4 today. How much progress is there compared to the Pico Neo 3?

Meta Quest Pro

2022年10月25日発売のMeta Quest Proです。こちらの動画は発売前のプロモーションビデオになりますが、よくまとまった内容なので見てみて下さい。パンケーキレンズのしくみも垣間見えますね。Metaはこのあたりのレンズ技術のスタートアップを取り込んで(Meta、VR向けパンケーキレンズの技術開発企業を買収)います。

iFixitの分解動画もあがっています。結構興味深い内容ですので見てみて下さい。(If the Meta Quest Pro Is the Future of Computing We’ll Never Be Able to Fix It

Trackingのところに書かれていますが、トータル10基のカメラが搭載されていて、そのうちの5基が外界撮影用になっています。HMD TrackingとVideo See-throughに使われていて、2基の下向きのカメラによってBody TrackingやHand Trackingも行われているということですね。

一方HMDの内側に搭載されている5基は、Eye TrackingとFace Tracking用途とのこと、特に後者は世の中的にも新しい機能で興味深いです。目の周辺や頬の筋肉の動きの変化を見て、主に表情を推定検出するものだそうです。Eye Tracking機能も搭載されていることから、当然のことながら、(Dynamic) Foveated Renderingをサポートしています。

このあたりの配置や回路系統は、Meta Quest Pro (Part 2) – Block Diagrams & Teardown of Headset and Controller に詳しく書かれていますので、是非見てみてください。

コントローラにも目を向けると、こちらにも3基ずつカメラが搭載されていて、トラッキングに使用されているとのこと。コストを考えるとここまでやるのはなかなかスゴイですが、Oculusionのない完璧なシステムを目指したということでしょうか。

そして価格も今年に入って$1499から$999へと全世界的に大幅な値下げが行われ、お手頃までは行かずとも購入を検討できるレベルにはなってきましたかね !?

PS VR2

2023年2月22日発売のPS VR2です。PS VRの発売が2016年10月ですから、実に6年半ぶりの新機種導入になりますね。Outside-InからInside-Outとなり、Eye Tracking機能が搭載されFoveated Renderingがサポートされました。

今回は薄型化はされませんでしたが、Tempest 3D Audio、Adaptive Trigger、Headset Feedbackと言った新しい機能が搭載され、VRゲーム体験の臨場感向上が図られています。そして今回も有機ELディスプレイでとてもきれいな映像体験ができます。

こちらの記事(「PlayStation VR2」レビュー、機能と体験に値段以上の価値。“ハイエンド”を感じるリッチなVRゲームハードに)も大変参考になるので、是非読んでみて下さい。

たしかに無線機種が出てきている昨今ケーブル接続は残念かも知れませんが、さまざまなPCに接続されてベストエフォートで動作すればよいPC VR機器とは違って、PS5専用で最高のパフォーマンスを常に出さなければならないPS VR2では、無線の選択は今回はできなかったということなのでしょうね。また、USB-C一本ですから、PS VRのときに比べたら随分よくなったと言えます。

分解動画や記事もあがっています。開発者による分解映像もあるので、是非見てみてください。

他社の機種がパンケーキレンズで薄型化してきている中、フレネルレンズで登場したPS VR2にはさまざまな意見が飛び交っていますが、ひとつのポイントとしてEye Trackingがあると思いました。分解動画を見ると、IRカメラがレンズユニットの中を向いています。つまり目やIR LEDの角膜反射点をできるだけ正面から撮影したかった、それによってEye Trackingの精度を高めたかったという強い意図を感じます。

パンケーキレンズを搭載したらレンズユニットはほぼレンズでいっぱいになってしまいますから、IRカメラはレンズユニットのエッジから目を撮影することになります。その場合、眼鏡対応でスコープを前後に動かせるPS VR2ではEye Trackingがずれてしまう状況に陥りやすいと考えられます。それを避けるためにも今回はフレネルレンズでレンズユニットを広く確保して、Eye Trackingの精度を高める選択をしたのではないでしょうか。

つまり最高のゲーム体験を実現するために、Foveated Renderingの性能を最大限確保したかったのではないかと思いました。また、ちょっとしたことかもしれませんが、ライトシールドが蛇腹になってPS VRのときよりもさらに光が入りにくくなってますよね。このあたりも、VRグラスを目指す他社の機器とは方向性が直交するものはありますが、最高のVRゲーム体験へのこだわりを感じました。

実際発売日からビッグタイトルが目白押しで、PlayStationならではのラインナップが存分に楽しめますね。

HTC Vive XR Elite

2023年4月3日発売のVive XR Eliteです。バッテリークレードルを装着するとしっかりしたVR HMDになり、外すとVive Flowを引き継いだコンパクトなグラス形状になります。もちろんパンケーキレンズ搭載です。

トラッキング用のカメラ4基とVideo See-through用のRGBカメラ1基に加えて、デプスセンサー1基が搭載されています。いよいよ汎用のVR機器でもデプスセンサーを搭載するものが出てきましたね。MR用途を意識した方向性を感じます。

一方今のところEye TrackingやFace Trackingはサポートされておらず、今後アドオンアクセサリーとしてサポート予定だそうです。このあたり価格と機能のバランスに戦略を感じますね。

こちらの記事(MRゲーム体験が感動!超多機能な「VIVE XR Elite」体験レポ)も大変参考になります。Vive Flowと比べるとカメラが増えた分サイズや重量がアップしているということですね。

分解動画や記事もあがっています。こちらも開発者による分解映像もあるので、是非見てみて下さい。

Vive Flow同様視力対応機能があるので眼鏡いらずなのは、眼鏡が煩わしいと思っている人にはうれしいですね。

さいごに

一時期急激な盛り上がりを見せたVRブームは一旦落ち着いた感はありますが、引き続きVR機器の進化は止まりません。一方メタバースという言葉が独り歩きしている感はあるものの、実際さまざまな成功事例も出てきています。

そして2023年6月2日、Meta Quest 3が発表されました。ざっくり仕様をおさらいしておくと、パンケーキレンズ搭載の薄型、Eye TrackingやFace Trackingはなし、深度センサーあり、連続的IPD設定ということで、HTC Vive XR Eliteとかなり似た方向性すなわちMR用途を意識した方向性になっているかと思います。

さらに2023年6月6日、満を持してAppleのVision Proの発表がありました。価格も飛び抜けているので現時点ではコメントは避けたいですが、こちら(アップルの「Vision Pro」をさっそく試してみた──体験は圧倒的だが“存在感”がある)にハンズオン(ヘッズオン)の記事があるので、是非見てみてください。

メタバースの加速、そして仮想通貨… どんな未来がやってくるのか、引き続き動向に目が離せない状況ですね。


   
関連記事
  • Outside-InとInside-Out その1
  • VR・AR機器の構造 その3 – AR機器の着目ポイント
  • 2022年後半から2024年前半のVR/ARヘッドセット市場概況
  • VR・AR技術の適用事例
  • VR・AR体験の臨場感向上へのアプローチ その1 – 臨場感とは
  • VR・AR体験向上へのアプローチ

    コメントを残す

    *

    CAPTCHA