VR

IEEE VR 2023レポート (Day3)

3/25~29の日程でIEEE VR 2023がありました。中国の上海開催かつバーチャルとリアルのハイブリッド開催ということで、久々にリアルでの参加も可能となりました。全スケジュールはこちらがわかりやすいです。3/25, 26はWorkshopで、3/27~29の三日間は数々のPaperセッションを中心にPosterセッションやKeynote/Panelセッションが開催されました。

ここでは Day1, Day2 に引き続き3/29 (Day3) のPaperセッションの内容を全網羅してみました。Abstractの翻訳レベルではありますが、トピックが多岐に渡ることが見て取れると思いますので、是非目を通してみて下さい !

Session 20: SocialEmotional

Virtual reality in supporting charitable giving: The role of vicarious experience, existential guilt, and need for stimulation

VRを利用したチャリティーすなわち募金活動は増え続けているのに反して、このエリアの学術研究は比較的少ない。本研究は慈善的贈与の基礎となるVRメカニズムを解析する。VRの慈善的要請は従来の2Dフォーマットのものと比べて実際の寄付金額を増やすことがわかった。そしてこの効果は他人の身になっての経験や罪の意識の存在を取りつぎ癒す効果の結果である。知見はまた境界条件としての刺激の必要性を示している。刺激の必要性が高ければ、慈善的寄付要請に応じるメカニズムによってより心が動かされたことを示している。

Measuring Interpersonal Trust towards Virtual Humans with a Virtual Maze Paradigm

本研究はソーシャルVRにおいて特定のバーチャルソーシャルパートナーに対する対人的信頼を測るための行動評価ツールである。ユーザータスクはVR迷路を通り抜けることであり、そこではバーチャル人間とインタラクションできる。検証実験において被験者は信頼できないアバターよりも信頼できるアバターとよりインタラクションを行いアドバイスを求めたりした。すなわち題材は対人信頼性の違いにセンシティブであり、バーチャル人間の信頼性を測る上で有用であることを示した。

The Dating Metaverse: Why We Need to Design Consent in Social VR

本研究は参加型の実験デザインに関する。実験はソーシャルVRで損害が起こらないようにするためにいかにして対人行動での合意をデザインするかというものである。実験にはVRデートアプリケーションを用いた。参加者とのデザイン研究集会を通じて、避けなければならない合意なしの経験を明らかにし、VRで合意を交わすデザインにした。合意をソーシャルVRでの損害体験の予防効果解をデザインするための有効なレンズとして位置づけ、バーチャル体験での合意の供与や拒否を行うメカニズムがないために起こってしまう好まざる体験すなわち損害をそれが起こってしまう前に何度も認識させるものを提案した。

Role-Exchange Playing: An Exploration of Role-Playing Effects for Anti-Bullying in Immersive Virtual Environments

ロールプレイングは精神療法や行動交換など広い分野で使用されている。しかしながら、ひとつのロールプレイング過程で複数の役割を演じることによる効果についての研究は少ない。本研究は新しいロールプレイング規範としてロール交換プレイングすなわちユーザーは同じひとつのシミュレーション体験の中で連続的に二つの正反対の役を演じ、より高い認知を図るものである。この新しいロール交換プレイング経験を没入型VR環境でデザインした。そして学校でのいじめをシナリオとして選択した。234人の中高生が実験に参加した。ロール交換の実験により、生徒たちはいじめに対してより倫理的に正しい見解を持ち、さらにはやさしく接する行動に対する共感や進んでそれを行おうとする気持ちの向上が見られた。また他人に対するいじめをやめようという気持ちへの傾倒の向上も確認された。ロール交換規範は従来のロールプレイング手法(そこでは被験者が演じる役に対する経験がない状態でシミュレーションが行われる)よりもよりよい効果が達成された。したがって、没入型VR環境でのロール交換プレイングは現実世界でのいじめ防止を(多い側だけでなく)少ない側に教育するのにも効果的と言え、10代へのモラル教育に対する重要性を示した。このロール交換プレイングはカウンセリング、セラピー、犯罪防止にも役立つ可能性がある。

Session 21: Perception 1

Empirically Evaluating the Effects of Eye Height and Self-Avatars on Dynamic Passability Affordances in Virtual Reality

セルフアバターは自分自身と環境空間特性の知覚に作用するように提示されてきた。しかしながらほとんどの仮想体験はユーザーの実際の身体全体バランスにフィットしない汎用的なセルフアバターが用いられるのがほとんどである。これは身体の到達性や操作性のような身体の大きさに相対依存する機能的判断これはに負の影響を与えかねない。これはタスクがゲーム内の動的オブジェクト周辺で操作する場合広く発生する問題である。したがって、動的仮想環境において自身とサイズが異なるセルフアバターがいかに機能的判断に影響を与えるかを理解することは重要である。これを鑑みて、本研究では背が低い、高い、丁度マッチしたセルフアバターを用い、動的な溝を通り抜ける際の判断に与える影響を評価した。

Manipulation of Motion Parallax Gain Distorts Perceived Distance and Object Depth in Virtual Reality

VRは豊富でマルチモーダルで没入的な感覚情報と空間整合性がユーザーに与えられることによって識別されるものである。しかしながら、没入型仮想空間を動き回る際、視覚刺激はデザイン上の事情やシミュレーションの本質的問題やシステム制限からしばしばその他の感覚キューと矛盾する。(たとえばレーシングゲームで加速時にも関わらず前庭器官への動きキューはほとんどない)感覚キュー矛盾は方向喪失や不快感と関連し、理論的には空間認識を歪めるものであり、ユーザー体験の中でいついかにしてそれらが表出するかを理解することは重要である。

How Virtual Hand Representations Affect the Perceptions of Dynamic Affordances in Virtual Reality

異なるバーチャルハンド表現がいかに知覚の動的首尾一貫性に影響を与えるか、衝突を避けてオブジェクトを獲得するタスクを用いて評価した。本研究では、3(仮想手先効果器表現) x 13(動くドアの周波数) x 2(ターゲットサイズ)のマルチ要因デザインを導入し入力手法とそれに付随する仮想手先効果器表現の影響を見る。実験は(1)コントローラ、(2)コントローラと手、(3)グローブの三種類を用いた。結果、手先効果器として手の傾向が強まるにつれ自己身体感は高まったが、仮想表現と使用した入力手法との間のマッピングずれの影響により、性能コストあるいはタスク負荷も高まった。

Inward VR: Toward a Qualitative Method for Investigating Interoceptive Awareness in VR

VRはあたかも別の場所にいるような、あるいは別の身体を獲得したかのような強い錯覚を生成でき、存在感や身体感の理論はVRデザイナーへの重要なガイドとなっている。しかしながら、VRは内受容性感覚のような自己身体感覚を与えることにも使用可能であるが、デザインガイドラインや評価手法はあまり明らかではない。これを鑑みて、本研究では再利用可能なコードブックを含む品質的評価手法を提案する。これはVRにおける内受容性感覚を精査するための多角的評価のための概念的フレームワークとなる。実験より、本手法はVRユーザーの内受容性感覚体験の理解に有効であることを示した。

Analysis of the Saliency of Color-Based Dichoptic Cues in Optical See-Through Augmented Reality

未来の普及したAR環境においては、ARシステムは実-仮想環境内の注目視点に対しユーザーの注意を効果的に引き導く必要がある。AR画像は実環境のユーザー視界の上に重畳されるものなので、こういった注意ガイド手法は他の仮想画像に競合してはいけないだけでなく、ユーザーの実環境の中で気を紛らわせたり注意を引くものと競合してはいけない。ARユーザーが入り込んでいる実-仮想環境は幅広いバリエーションがあるため、ユーザー環境の視覚的解析を行いその周辺環境に合わせてキューが目立つように見た目を変化させることなしに視覚キューのポップアップデザインを行うことは困難である。本研究はオプティカルシースルー型AR機器に対し離眼型視覚キュー、特にユーザーの両眼間の色相彩度輝度の違いを含んだキューの利用による可能性の最初の調査である。このタイプのキューは他のステレオディスプレイ上でユーザーによって予めよく注意して処理し、オプティカルシースルー型ARディスプレイでもユーザー注意を引く効果的な手法となるように検討され表示されてきた。本研究では二つの実験を行った。ひとつはオプティカルシースルーディスプレイにおける離眼型視覚キューの顕著性を評価し、もうひとつはそれらの主観評価を行った。結果、色相ベースの離眼キューあるいは禁色はこの目的に非常に効果的な可能性があり、輝度彩度ベースのキューと比較してポップアウトタスクで顕著に低いエラーレートを達成した。

Session 22: Multimodal and Haptics

GroundFlow: Liquid-based Haptics for Simulating Fluid on the Ground in Virtual Reality

ほとんどのハプティックデバイスはリビングルーム、草原、都市など乾いた環境でのフィードバックを行うものである。川、ビーチ、水泳プールなど水関連の環境はあまり研究されていない。本研究ではGroundFlowというVR環境で流体をシミュレートするような液体ベースのハプティックシステムを提案する。デザイン上考慮すべきことを議論し、システム構成やインタラクションデザインを提案する。複数の流れをフィードバックするメカニズムのデザインに対する二つのユーザー実験を行った。さらにメカニズムの可能な使用方法を探求し、VR開発者やハプティック研究者に知らせるべき制限や困難挑戦について考慮するための3つのアプリケーションを開発した。

Wind comfort and emotion can change by the cross-modal presentation of audio-visual stimuli of indoor and outdoor environments

癒しのための風刺激に関する前の研究では、複数知覚への風の心地よさの刺激の効果を見逃していた。本研究ではVR環境での音声映像刺激が風の心地よさや感情への効果に変化を与えることができるかを検証する。VR環境で室内および屋外体験を行う場合の風の心地よさと感情を測定した。結果、VR環境での牧草地映像と自然な風の音は風の心地よさ、風の開放性、感情状態に顕著な改善効果を示した。シミュレートされた自然の風は風なしの状態と比べてメンタルストレスが削減されることも、アンケートと生体信号データから示された。

Eat, Smell, See: Investigating Cross-Modal Correspondence when Eating in VR

AR/VRアプリケーションの中で味を扱うことについては、ソーシャルな食事会から障害者治療までいくつかの間違いないユースケースがある。本研究では被験者にVR環境の中で味のない食物を食べながらそれと合致するあるいは合致しない視覚および嗅覚刺激を与えたときのユーザー実験を行った。知覚への左右を試す挑戦的な実験の結果、視覚がいつも知覚を支配あるいは誘導役であるわけではなく、3つの一致しない刺激は知覚を激しく阻害することがわかった。複数知覚の統合、食事のインタラクション、人間の基本的知覚という視点から議論を行った。

Modified Egocentric Viewpoint for Softer Seated Experience in Virtual Reality

本研究ではVR環境でのユーザー視点の位置や向きをずらすことによって椅子の触覚特徴を変化させることを考える。椅子の柔らかさを強めるため、ユーザーが椅子の座面に到達したときに即座にエクスポネンシャルカーブで視点をずらす(ふわっとした動きにする)。加えて、仮想背もたれの弾力性を視点の変化によって操作した。主観評価の結果、被験者は実際の椅子よりも柔らかい座面で弾力性がある背もたれを知覚した。ただし視点変化のやりすぎは不快感を招いた。

Upper Body Thermal Referral and Tactile Masking for Localized Feedback

本研究は熱刺激と接触マスク錯覚を利用した熱フィードバックの効果に関する。一つ目の実験では、16個の振動刺激アクチュエータをと4つの熱アクチュエータを用いてユーザーの背中に熱刺激を与えた。結果、クロスモーダルな熱-触覚作用により位置制限された熱フィードバックが達成された。二つ目の実験ではこのアプローチをVR環境で行った。結果、熱刺激と接触マスク錯覚提示において熱アクチュエータの数を減らしてもより大きな反応事件でより正確に位置制限された熱フィードバックが達成された。

Session 23: Gestures and Interaction

Real-Time Recognition of In-Place Body Actions and Head Gestures using Only a Head-Mounted Display

本研究はユーザーがWIP時のボディアクションとHMD装着し立っているときのヘッドジェスチャーを認識するための同時並列に動作する2本の1D CNNに関する。提案手法はHMD以外に特別なハードウェアや追加のトラッキングデバイスは必要なく、現存する他手法に比べてかなり多数のボディアクションやヘッドジェスチャーを認識することができる。提案手法をバーチャルロコモーションタスクに適用し、提案するボディアクションインターフェイスが信頼度高くバーチャルロコモーションのアクションを認識できることを示した。

Skeleton-based Human Action Recognition via Large-kernel Attention Graph Convolutional Network

骨格ベースのアクション認識はVRにおいて幅広いアプリケーションへの適用可能性を持つ。とりわけ最近の研究はグラフコンボリューションオペレータ経由で時空間パターンを学習するが、積みあがったグラフコンボリューションは長期間の依存関係のモデリングにおいては周辺的な役割を果たしているに過ぎない。本研究ではSkelton large kernel attentionオペレータを提案する。SLKAは演算負荷をそれほど増大させることなく受容器を拡大しチャネル適応性を向上する。さらに時空間large-kernel attention graph convelotion networkという新しい認識ネットワーク構造をデザインした。LKA-GCNは3つのアクションデータセットの中でSOTAレベルの結果を達成した。

GestureSurface: VR sketching through assembling scaffold surface with non dominant hand

3Dスケッチはデザインの面から没入型の描画経験を提供する。しかしながらVRにおいて深さ方向の認識キューが不足していると、正確な描画ストロークが難しくなる。これを鑑みて、本研究ではストロークを支えるためのジェスチャーベースの足場を提案する。ジェスチャデザインのための実験を行い、GestureSurfaceという両手使いのインターフェイスを提案する。これは利き手でない方の手で足場を形成するためのジェスチャーを行い、もう一方の手ではコントローラで描画を行うものである。利き手がふさがっているときでも、利き手でない方の手が遊んでいることを減らしジェスチャー入力を行うことによって効率や持続性が向上する。20人の被験者でGestureSurfaceを評価し高い効率と低疲労が示された。

Comparing Different Grasping Visualizations for Object Manipulation in VR using Controllers

VR環境でユーザーがコントローラを用いてバーチャルオブジェクトとインタラクションを行うときに手の握りを視覚化することは未開の領域である。本研究では38人の被験者による実験で、Auto-Pose, Simple-Pose, Disappearing-Handの3種類の手の握りの視覚化を比較した。Auto-Poseは自動的にオブジェクトの上に手の握りがアジャストされるもの、Simple-Poseはオブジェクトが選択されたときに手が完全に閉じられるもの、そしてDisappearing-Handはオブジェクトが選択されたときに手が見えなくなりそれがターゲットに配置されたときに再び手が描かれるもの。ユーザー性能、自己身体感覚、好みの効果を測定した結果、Auto-Poseが最も自己身体感覚が強くユーザーに好まれるものであった。

Kine-Appendage: Enhancing Freehand VR Interaction Through Transformations of Virtual Appendages

運動感覚フィードバック、すなわち手がオブジェクトと接したときに感じる制限感や抵抗感は、VR環境での自然なフリーハンドのインタラクションにとって非常に重要なものである。しかしながら、メカ的なハードウェアを用いた運動感覚フィードバックは扱いにくく商品のVRシステムでは制御が難しい。本研究では、仮想環境での運動感覚フィードバックの欠如を補う付属的概念を提案する。具体的にはユーザーのアバターハンドに仮想的な付属物を付加する。付属物が仮想オブジェクトに接触したときに回転変形し、離れたときに元の形状に戻る。キネ付属物の実証実験としてブリットルスタイラス、すなわち同形タイピングの拡張版をデザインした。経験的な評価の結果、(i)ブリットルスタイラスはシンプルな同形タイピングの入力エラーレートを入力スピードを犠牲にすることなしに劇的に改善 (6.53% -> 1.92%) した。 (ii)ブリットルスタイラスは運動感覚フィードバックの感覚を与えることができた。 (iii)被験者は疑似ハプティック(+視覚キュー)手法の中でもブリットルスタイラスを好んだ。なぜなら高性能かつ手の動きが滑らかだったからである。

Session 24: Education and Medical

Investigating Spatial Representation of Learning Content in Virtual Reality Learning Environments

本研究ではVRにおける学習コンテンツの空間表現について議論する。一つ目の研究はレーザー切断に関する学習コンテンツで次の4種類の配置を42人の被験者で比較する。ワールド固定(TV表示)、ユーザー固定(パネルがコントローラーあるいはHMDに固定)、オブジェクト固定(パネルが対象オブジェクトに固定)。知識の増大、転移、認知負荷には顕著な違いは見られなかったが、オブジェクト固定はTV固定やHMD固定に比べて顕著にスコアが高かった。二つ目の研究は22人の被験者が4種類の配置から良いものを選択し、そのあと彼らの好みを理解するための半構造化インタビューを行った。

Virtual Optical Bench: Teaching Spherical Lens Layout in VR with Real-Time Ray Tracing

本研究では仮想光学実験台を提案する。これはVR空間内で球面レンズを配置してユーザーが光学実験を行えるアプリケーションである。Nvidia OptiXを利用して数学的に正確なシミュレーション光学システムを実装し、6人の光学専門家とともにVRアプリケーションのプロトタイプとしての評価を行った。さらに彼らのフィードバックを元にUE4のVRアプリケーションとして実装し直した。再実装は光学系の配置を実際に教えることに使いながら動的に行われ、18人の学生が品質的評価を行った。結果、仮想光学実験台は良好な有用性を示し、学習コンテンツの理解の向上も観測された。

How to maximise Spatial Presence: Design Guidelines for a Virtual Learning Environment for school use

没入型VRを利用した学習の研究は増大する一方だが、没入型学習がどのように効果的なのかにもっと踏み込む必要がある。学校でデジタルメディアを利用することへの妨げとなるハードルは、VR学習コンテンツの実用的な使い方に対するデザインガイドラインがないことである。本研究では、デザインベースの研究アプローチを用いて、ドイツの中学校10年生に対してVR学習コンテンツを作るためのガイドラインを策定し、実際的なインストラクションが可能な実世界のような学外VR空間を再現した。本研究は、いくつかのマイクロサイクルでVR学習環境を構成することにより、いかに没入的経験を最大化できるかを評価した。

ImTooth: Neural Implicit Tooth for Dental Augmented Reality

本研究は、シンプルで正確なニューラルネットワーク由来のモデル駆動型歯科ARシステムImToothを提案し、Hololens2に実装した。SOTAのニューラルネットワーク表現のモデル化能力と微分最適化特性をベースに、シングルネットワークでの再構成と登録部と融合することにより、現行の歯科ARソリューションを大きく単純化することに成功し、再構成、登録、インタラクションを可能とした。実験の結果、本手法は高精密モデルを再構成し、正確な登録を達成した。それは弱い、繰り返しの、あるいは一貫性のないテクスチャーにもロバストであった。また本システムは、ブラケット配置などの歯科検診や治療にも容易に適用可能であることを示した。

MD-Cave: An Immersive Visualization Workbench for Radiologists

MD-Caveは、放射線技師による視認診断を助けるために強化されたステレオ表示を行う没入型解析システムである。システムは没入型視覚化と3Dインタラクションにおいて現代的規範を利用している。これは3D容積データの解析に非常に向いている手法である。放射線技師が、頻繁にそして長時間使用するという意味で、デスクスペースを効率的にそして快適に使えるよう実用性を重要視した。MD-Caveは一般的であり、(1)3面のディスプレイを使用し高解像度のステレオ視覚化ができ、(2)頭と手のトラッキングから3Dインタラクションが可能であり、(3)特別なセグメンテーションアルゴリズムなしに解剖学的深層構造の3D視覚化を行う一般的フレームワークをサポートしている。このような一般的フレームワークのサポートは、多くの診断シナリオへの拡張が可能となる。MD-Caveの開発に際しては、二人の放射線専門家に、放射線検査を行う視点でMD-Caveおよび3Dインタラクションの使い勝手を評価してもらい、近しく協力しフィードバックをもらった。また、放射線専門家によるケースタディや、膵臓がん、肩のCT、COVID-19向け胸のCT検査といった実世界のいくつかの診断シナリオを通して評価をおこなった。

Session 25: Displays and Haptics

Realistic Defocus Blur for Multiplane Computer-Generated Holography

本研究は、自然な見た目のデフォーカスボケが可能な人工物のない高品質ホログラムの再構成のための新しい複数平面CGHの計算方法を紹介する。具体的には新しいターゲティング手法とロス関数を紹介する。ターゲティング手法は各デプス平面のシーンのデフォーカス部分に寄与するのに対し、新しいロス関数は再構成された画像のフォーカス部分とデフォーカス部分それぞれの解析に寄与する。本手法はいくつかの反復および非反復CGH手法を用いて位相のみのCGH計算を行う。結果、複層法由来の制限による変形勾配降下ベースの最適化手法により最高の画像品質を達成した。また実証実験用ホログラフィックディスプレイを用いて評価を行った。

Shadowless Projection Mapping using Retrotransmissive Optics

本研究では、ターゲットオブジェクトの表面が頻繁にユーザーの身体によって投影機から見えなくなってしまうような環境でインタラクションを行うためのアプリケーション用影なしプロジェクションマッピングシステムを紹介する。このような厳しい環境に対し遅延なしの最適解を提案する。具体的には、第一の技術貢献としては、幅広い視野角からターゲットオブジェクト表面に画像を投影するための逆伝達可能な大きなプレート列を適用する。さらには提案した影なし原理特有の技術的課題、すなわち脇にそれた光対策と手のタッチ検出に対しても取り組んだ。原理検証用プロトタイプを実装し、実験を通して提案技術を評価した。

Off-Axis Layered Displays: Hybrid Direct-View/Near-Eye Mixed Reality with Focus Cues

本研究は軸がずれた複数ディスプレイ技術に関する。3DTVに対しフォーカスキューをサポートするシステムである。具体的には3DTVとHMDを融合して利用することによりフォーカスキューを提供する。軸がずれたディスプレイに対するリアルタイムレンダリングパイプラインを実装し、新しいディスプレイ構成の調査を行った。加えて、3DTVとMonoTVに対してHMDを融合する2種類のプロトタイプシステムを実装した。さらに、軸がずれた複数ディスプレイ技術に減衰層と視線トラッキングを適用することにより、いかに画像品質が向上するかを示した。それぞれのディスプレイ成分を良く解析し、プロトタイプを用いた実験画像も紹介する。

Perceptually-guided dual-mode virtual reality system for motion-adaptive display

高品質VRデバイスの開発は、ディスプレイパネルの製造、リアルタイムレンダリング、データ転送のすべてで大きな挑戦を要する。これを鑑みて、人間の時空間視覚特性を考慮したデュアルモードのVRシステムを提案する。提案するVRシステムは新しい光学構成となっている。本システムは、異なった描画シーンに対するユーザーの知覚要求に応じてディスプレイを切り替え、与えられた描画バジェットから時空間解像度を適応的に調整して表示する。結果、最適な知覚品質の画像をユーザーに提供する。

Dynamic Redirection for VR Haptics with a Handheld Stick

本研究は、汎用的な手に持つスティックを利用した触覚リダイレクション手法を提案する。これはバーチャルオブジェクトをタップしたり縁のトレースなど複雑な接触に対してユーザーに複雑な形状のオブジェクトに触っているかのような経験を提供する。具体的には、ユーザーがスティックを伸ばし仮想オブジェクトと接触したときに、仮想オブジェクトの接触点の状態に合わせて物理オブジェクトのターゲット接触点が連続的に変化更新され、仮想スティックが仮想そしてリアルの接点に同期してリダイレクトされる。リダイレクションは仮想スティックのみかあるいは仮想スティックと手の両方に適用した。26人の被験者によるユーザー実験により、提案リダイレクション手法の有効性を示した。

Session 26: Agents and Perception

A study of the influence of AR on the perception, comprehension and projection levels of situation awareness

本研究では、ARがアシストするメインタスクにおいて2次的表示要素を用いて、いかにARがユーザーの気付きに効果を与えるかを評価した。結果、これらの表示要素は適切な情報を提供しうることがわかった。したがって、それらの気付きをよく理解することは興味深い。この観点で、工業作業場でのARアシスト歩行誘導における2次的表示要素への気付きを測定した。本研究では気付きを3つの状況で比較した:紙の地図、仮想誘導、仮想誘導と2次的表示による仮想キュー。さらに行ったSA測定を実世界にも適用し、本研究の設定では、主に知覚レベルの話しとしてはARの利用は2次的表示要素の気付きを低下させることがわかった。

The Impact of Avatar and Environment Congruence on Plausibility, Embodiment, Presence, and the Proteus Effect in Virtual Reality

本研究では、VRに関連する感覚的意識やプロテウス効果と言ったアバターや環境タイプが与える効果を評価した。被験者は、スポーツウェアあるいはビジネスウェアを着たアバターで自己身体化し、意味的に合致するあるいは合致しないVR環境でエクササイズを行った。アバターと環境の合致性は顕著にアバターのもっともらしさに影響を与えたが、自己身体感覚や空間存在感には影響を与えなかった。顕著なプロテウス効果が見られたのは、仮想身体の所有感が高かった被験者のみであったことから、仮想身体の強い所有感がプロテウス効果の促進の鍵となることがわかった。

A Systematic Review on the Visualization of Avatars and Agents in AR & VR

ARやVRは、特にソーシャルアプリケーションの側面で、研究室レベルから消費者レベルへと一般化している。これらのアプリケーションには人間の視覚表現や知能の存在が必要である。本研究では、系統的な文献レビューを行い、ARやVRでのレンダリング手法や身体パーツの視覚化の効果を評価した。具体的には、様々なアバター表現を比較する72論文を解析した。結果を今日のAR/VRシステムの状況として議論統合し、実装者へのガイドラインを提供した。さらにはAR/VR環境でのアバターやエージェントの今後の研究を後押しする意味で、将来有望な研究エリアを特定し示した。

Volumetric Avatar Reconstruction with Spatio-Temporally Offset RGBD Cameras

RGBDカメラは、容積を持つアバターの再構成のためにユーザーの動きをキャプチャーするのに有用である。これによりVRでの遠隔グループ間の豊富なインタラクションを可能にする。本研究は、フレームレートが上昇傾向にある中で3Dアバターの再構成を可能にするシステムを提案する。市場のRGBDカメラのフレームレート制限を乗り越えるため、複数カメラを二つの時空間オフセットグループに分割し、時間オフセットを持ったRGBDデータストリームを融合してリアルタイムに再構成するパイプラインを実装した。同じ数のカメラで構成された環境でのキャプチャー比較により、時空間オフセットを持たせたRGBDカメラの利用は有用であり、時間的に同じアバターを生成する上で再構成のフレームレートやシーンのカバー範囲が向上した。

Effects of the Visual Fidelity of Virtual Environments on Presence, Context-dependent Forgetting, and Source-monitoring Error

本研究はVEとREを交互に体験することによる二つの効果について考察する:「状況依存の忘却」と「情報源識別間違い」である。前者はVEで学んだ記憶はREよりもVEでより簡単に思い出される、と言ったことである。後者はVEとREで学んだ記憶は簡単に混乱する、記憶の情報源を特定するのが難しいということである。VEの視覚迫真性がこれらの効果の原因を担っているという仮説を設けた。しかしながら、結果としては視覚迫真性は顕著に存在感に影響を与えるが、「状況依存の忘却」や「情報源識別間違い」には影響を与えないことがわかった。

Session 27: Perception 2

Body and Time: Virtual Embodiment and its effect on Time Perception

本研究は自身の身体と時間感覚の関係に関するもので、ユーザー活動をはぐくむ新しいVR実験を用いて行った。48人の被験者がランダムに異なる自己身体感覚度の実験を行った:i)アバターなし(low), ii)手のアバターあり(medium), iii)高品質のアバター(high)の3レベルを用意した。被験者は繰り返し仮想ランプを灯し、時間間隔や総経過時間を推定する。 結果、自己身体感覚と時間の知覚に顕著な効果を認めた:中庸および高い自己身体感覚の場合と比較して、低い自己身体感覚では時間が実際よりもゆっくり流れた。

Comparing the Effects of Visual Realism on Size Perception in VR versus Real World Viewing through Physical and Verbal Judgments

VRは多分野にまたがるアプリケーションや研究に使われることでよく知られている。これらのアプリケーションでの視覚表現は多様であり、こういった状況下でタスク性能のためには正確な大きさ認識が重要である。しかしながら、VRにおける大きさ認識と写実性の関係はまだあまり研究されていない。本研究では同じVR環境下で4種類の写実状況におけるターゲットオブジェクトの大きさ認識の比較実験を行い評価した。結果、被験者の大きさ認識は写実環境でもフォトリアリスティックではない環境でも正確だった。これは写実性とは無関係の不変な何かが環境の中で意味のある情報を与えていることを示唆している。

Can I Squeeze Through? Effects of Self-Avatars and Calibration in a Person-Plus-Virtual-Object System on Perceived Lateral Passability in VR

セルフアバターと仮想オブジェクトとの間のインタラクションにおいてはアフォーダンスという意味でのチャレンジが高まっているが、圧縮やべたつきと言った動的な表面情報がVRでは欠けている。この効果は仮想オブジェクトとインタラクションを行うときにそれらの重さや慣性フィードバックとして増幅されるが、しばしば不釣り合いな状況になる。これを鑑みて、セルフアバターがあるときとないときで、動的な表面情報の欠如が仮想ハンドヘルドオブジェクトの横方向可動性の判断に与える影響を評価した。結果、被験者はセルフアバターがある場合は動的情報の欠如を許容することができたが、セルフアバターがない場合は圧縮された身体での内部感覚に頼るしかなかった。

A Study of Change Blindness in Immersive Environments

人間はシーンのある変化を検出することにおいて貧弱な性能である。この現象はチェンジブラインドネスとして知られている。この現象の明確な理由は未だ完全にはわかっていないが、我々の注意や記憶量には制限や限界があるというのが共通の認識である。本研究では没入型3D環境を用いてチェンジブライドネスの実験を行った。二つの実験を実装した:ひとつ目は、変化の性質の違いがいかにチェンジブライドネスに影響を与えるかに焦点を当てた。そして二つ目はさらなる調査として、我々の視覚活動の記憶容量との関係を調査し、変化の数の影響について解析した。

Exploring Plausibility and Presence in Mixed Reality Experiences

本研究は、MRにおいて異なる情報処理層(すなわち感覚/知覚/認知レイヤー)で認識が合致しなかった場合の影響について解析し、もっともらしさや、空間的そして全体的存在感への効果について調査した。仮想修理アプリケーションにおいて、被験者はランダムな2×2デザインでVR(適合した感覚/知覚)とAR(不適合な感覚/知覚)環境で作業を行った。認知的不適合な刺激として原因不明の停電を発生させ、知覚された原因と効果の関係を調査した。結果停電の効果は、VRとARで知覚されたもっともらしさと空間的存在感の評点に顕著な差異が認められた。

Continuous VR Weight Illusion by Combining Adaptive Trigger Resistance and Control-Display Ratio Manipulation

本研究は、ハードウェアベースの技術とソフトウェアベースの疑似触覚アプローチとの新しい組み合わせによる、連続的VR重さ錯覚の達成に関する。改造されたVRコントローラが握られている間アダプティブトリガーの抵抗が与えられるのに対し、物体を持ち上げている間コントロール-ディスプレイ比由来の視覚操作により重さ感覚が与えられる。心理物理的実験として、本組み合わせアプローチと視覚操作のみの場合で比較を行った。結果被験者は、提案手法の場合のほうが重さの小さな違いを顕著に感じ取っていて、重さの違いの判定も早かった。本研究は、仮想重さ認識に対して物理的な手法と仮想的な手法を組み合わせることによる意義深い利点を示した。

Session 28: InfoVis and TextEntry

iARVis: Mobile AR Based Declarative Information Visualization Authoring, Exploring and Sharing

本研究はiARVisを提案する。これはモバイルARベースの情報可視化環境の制作、経験と共有のための実証実験向けツールキットである。従来は低レベルのプログラミングスキルが頻繁に要求され、長々としたコーディングが必要であった。本研究では宣言型のアプローチでAR環境を定義する。すなわち情報がいかに自動的に配置レイアウトされインタラクションされるか効果的に構築される。さらに、デザイナーの制作への利便性とユーザーへの中断なしの体験を提供するため、自動リロード、保存維持、連続実行など高度な機能も実装した。実現性や拡張性を示すため、性能評価と専門家のレビューを交えながら異なるユースケースでiARVisの評価を行った。

Comparing Scatterplot Variants for Temporal Trends Visualization in Immersive Virtual Environments

トレンドは変数や属性の度重なる変化である。傾向は、言い換えると増大、現象、反転と言った線や点のふるまいを観測することである。以前の研究では、大小ディスプレイを用いた効果的なトレンド表現を比較するために、Animation, Small Multiples, Overlaid Trailsと言った異なる散布図表現を評価した。本研究では、解析者が時系列トレンドデータを調査解析するのに最適な手法を調査するため、没入型仮想環境で同様の技術を評価した。結果、Overlaid Trailsが最も解析が早く、Animation, Small Multiplesがそれに続いた。正確性はタスク依存だった。加えて、インタラクションの評価やアンケートベースの解析も行った。

Text Input for Non-Stationary XR Workspaces: Investigating Tap and Word-Gesture Keyboards in Virtual and Augmented Reality

本研究は静止型ではない(HMD型)VRおよびビデオシースルー型ARといったXRディスプレイ向けの2種類のテキスト入力技術に関する。64人の被験者によるXRディスプレイと入力技術の評価では、テキスト入力性能に強い影響が見られた。結果、スワイプ型キーボードよりもタップ型キーボードの方が、高い有用性、より良いユーザー体験、低いタスク負荷が認められた。どちらの手法もVST ARよりもVRの方が入力速度が速く、VRのタップキーボードが最も速かった。被験者は顕著な学習効果を示した。本研究の実装は、誰でも複製あるいは再利用が可能である。

CrowbarLimbs: A Fatigue-Reducing Virtual Reality Text Entry Metaphor

本研究ではCrowbarLimbsを提案する。これは2本の変形可能で長い仮想Limbを用いたVR向けの新しいテキスト入力メタファーである。CrowbarLimbsはユーザーが心地よい姿勢で手や腕を配置できるもので、手、腕、肘の身体疲労を軽減する。さらに、以前の選択ベースの手法と比較して同等のテキスト入力速度、精度、システム有用性を達成した。CrowbarLimbsの形状は、疲労に対する評価とテキスト入力速度に顕著な効果を示した。さらに、仮想キーボードをユーザーの近くにかつ身長の半分の高さに配置したときにテキスト入力速度に顕著な効果が見られた。

I Can’t See That! Considering the Readability of Small Objects in Virtual Environments

VR環境で小さなオブジェクトとインタラクションしたり解釈したりすることは依然として問題がある領域であり、特に実世界のタスクの複製で行う場合は問題である。本研究では小さなオブジェクトの有用性や可読性の向上のために三つの手法を提案する:i)そこに拡大する、ii)別のレプリカを拡大する、iii)オブジェクトの近くに読みだしたテキストを大きく表示する。それぞれの手法の有用性、存在感、知見保持力を比較するユーザー実験を行った。結果、対象領域の拡大は情報と結びついたオブジェクトの有用性向上には十分ではなく、一方読みだしたテキスト表示はタスクの完遂を助けるものではあるが、知見保持力は低かった。

さいごに

以上IEEE VR 2023のPapaerセッションDay3をまとめました。個人的にはやはりDisplays関連は面白かったですね。また錯覚 (Illusion) に関連するものも散見されましたが、Change blindnessからProteus effectまでどれも興味深かったです。Avatar関連は自己身体感覚にまつわるVRならではの効果ですし、人の錯覚自体にまつわるものでもVRならではの手法で評価されていました。もうひとつ大きなトピックとしてEducationがありました。Educationとしての光学シミュレーションシステムは、見えないものを簡単に見える化してしまえるVRの力を感じましたし、Role-Exchangeによるいじめの防止教育も大変勉強になりましたね。

次回はKeynotesをお届けします。お楽しみに !


   
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